The Nation Newspaper, Explore section ‐ 健康のための癒し
2002年9月14日
通常、瞑想を行うときに意識を集中させるポイントが、第3の眼です。古代から伝わるアーユルヴェーダの治癒療法で、ここに温めた薬用オイルを流しかける療法をシーロダーラと呼びます。
その療法を、スリランカのバーベリン・リーフ・アーユルヴェーダ・リゾートで体験することになりました。木製のマッサージテーブルに上半身裸で横たわると、陶器製のポットから、直接、第3の眼に暖かいオイルが絶え間なく流し込まれました。そのオイルを使い、優しく頭全体から首へとマッサージしてもらうと、意識がもうろうとするような無力感が漂いました。
バーベリン・リーフの専門医に処方してもらった、1週間コースの毒素排除とストレス解消の療法の一つが、シーロダーラでした。
リゾートに到着したばかりの私は、カチカチと音を刻む時限爆弾のような状態でした。ところが、1週間にわたって毎日、オイル・マッサージ・ハーブ・バス、ハーブ薬の治療を受け、ストレス緩和のために毎日処方されるゴトゥカラ・スープなどのアーユルヴェーダ式ベジタリアン料理を、処方プランに従って摂取していくうちに、だんだんと自分が誰とでも隔てなく話しをしているのに気づきました。リゾートの相客が旅立つ頃には、抱きしめて別れを言うほどになっていたのです。
アーユルヴェーダは、その起源を5000年も前に遡り、インドに生まれたとされる古代のホリスティックな自然治癒の体系です。とはいえ、秘教的な哲学、難解な療法、複雑に調合されたハーブ薬などの理由も一部手伝って、その科学は、現代の消費者には依然馴染みの薄いものです。
「生命の科学」の意味を持つアーユルヴェーダ、その医療の基礎となるのは、人間の身体のタイプを、ドーシャと呼ばれる3つの生物学的な体質に分類する理論です。ドーシャのバランスが崩れると、人間は病気を患います。3つのドーシャとは、ヴァータ、ピッタ、カッパからなります。それらのエネルギーの組み合わせは、人それぞれ特徴があります。したがって、同じ病気を持った二人がいる場合、根本的な病気の原因は、ドーシャの構成によって異なります。アーユルヴェーダ医師が、病気を起こしているドーシャの診断結果に基づいて、病態と個々の体質に合った治療のための処方をします。
アーユルヴェーダの治療が目指すのは、病気の症状を治すだけでなく、ハーブ療法、オイル・マッサージ、食事療法、ヨガ、瞑想を組み合わせて、体系的に肉体と精神面のバランスを整えることです。
アーユルヴェーダの理論と実践は、インドの文化と同様に、2-3世紀に仏教の教えを普及するために海外へ渡った僧侶によって、スリランカ、ビルマ、タイといった近隣諸国へと伝達されました。当時の僧侶は治療師でもありましたので、医療知識も同時に普及していきました。
今日のスパ愛好家の方は驚かれるかもしれませんが、タイのスパ・トリートメントで使われる、暖かいハーブ・ボールを当てる湿布療法、ハーブ・バスなどの多くの療法は、アーユルヴェーダに由来します。タイ古式マッサージにおけるいくつかの技法でさえ、その起源は、インドのヨガの伸びのポーズに遡ることができます。
そのため、バーベリン・アーユルヴェーダ・センターの温熱療法タイプの治療には、ある種の馴染みやすさを感じる方も多いでしょう。ですが、この施設に来て気づいたのは、タイのスパと違って、スパの豪華な雰囲気を醸し出すための典型的な備品、水に浮かぶ花、香りのキャンドルなどの表面的な飾りを置いていないことです。バーベリン・リーフで施される治療は、快楽を求めるものではありません。その焦点は、心と身体の治癒に置かれています。
アーユルヴェーダ・ヘルス・センターの建物には、専属のアーユルヴェーダ医師のいるコンサルテーション・ルーム、治療室、毎朝ハーブ薬を調合する薬剤室、ゲストが毎日処方されるドリンク剤や粉薬を受け取りに行く診療室があります。
アーユルヴェーダ・リゾートといえば、ロマンチックで緑豊かな、インドのケララ海岸を思い浮かべる方が多いはずです。その一方、スリランカというと、この安らぎの島で、数十世紀にも渡ってホリスティックな癒しの科学を実践してきたにもかかわらず、自然治癒のリゾートを思い起こさせる場所ではありません。それでも、威厳のある北隣の大国から連想する、過酷なイメージを敬遠しがちな旅行者にとって、本格的アーユルヴェーダ治療を専門に提供するスリランカの癒しのリゾートは、近寄りやすい旅の選択肢と言えます。
ミチコとサチコという名前の二人の若い日本人女性に会いました。二人は、スリランカのゆっくりとした生活様式に惹かれて、バーベリン・リーフを訪れていました。女友達同士の二人は、絵葉書になりそうな美しい田園地方を観光する合間、湯気の立つ熱い紅茶を飲みながら、4年間もインドのアーユルヴェーダ・リゾートに憧れ続けてきたことを、たどたどしい英語を使って話してくれました。 しかし、最近のパキスタンとインド間の軍事的緊張を見て、 行くのが怖くなったそうです。偶然にも日本語のウェブサイトを見た二人は、スリランカがアーユルヴェーダ・リゾートの観光地であることを知りました。そして、東京都内のホテルの職を辞めてまで、リゾートに1ヶ月滞在することを決めました。ハッとするほど真っ黒に日焼けした二人の姿から判断して、彼女達の元気と健康を取り戻す旅は、順調に進んでいるようでした。
バーベリン・リーフを訪れるゲストは、アメリカや東アジアよりも、アーユルヴェーダが熱烈な支持を受けているヨーロッパから来られる方が大部分で、その理由も様々です。中には、アーユルヴェーダ治療が有効とされる、糖尿病、湿疹、乾癬、呼吸器系疾患や肥満など、医学的に治療の難しい病気の改善を求めてやって来る方もいます。また、単にストレス解消やデトックスを目的に来る方もいます。滞在理由や経歴が何であれ、自然治癒力を引き出すアーユルヴェーダを実践して、ウェルネスを取り戻すという、共通の目的を持っています。
母親の強い説得を受けて、バーベリンに長期滞在した女性がいます。ケイトが到着した時は、99キロもの体重に悩まされていましたが、結局、予定していた3週間を大きく超えて滞在することになりました。3ヵ月後にリゾートを離れることになった彼女は、22キロの減量に成功し、ホテル玄関で涙の門出を祝っているところでした。ケイトにとって、リゾートで過ごした月日は、心理面と精神面で重大な変化をもたらしたのです。
オランダ植民地時代のアンティックの長いすに、足を組んで腰掛けた彼女が話してくれました。「太り過ぎだった頃、巨大な身体の私が、本当の自分だって受け入れられませんでした。鏡で全身を見ることが出来なくて、顔だけを見て、他の部分は見ないようにしていました。3ヶ月の間、処方箋のハーブを飲んだり治療を受けたりして、食事の仕方も変えて、ヨガや瞑想に参加して過ごした結果、前とは違った感情と肉体のバランス感が生まれて、そもそも体重が増えていった原因の摂食障害がコントロールできるようになりました。心と身体は、互いにどう通じ合っているのか理解できました。」
「それから、リゾートの環境が非常に大きな支えになりました。ダイニング・ルームにいる専属の医師とスタッフが、どの食べ物が何に効くのかを注意してくれるからです。」
このリゾートに長期滞在するゲスト特有の静かな口調で、ケイトは語ります。目の前に広がるインド洋の軽快な波音が気持ちを和らげ、毎日のオイル・マッサージが緊張をほぐしてくれます。リラックスを手に入れた長期滞在のゲストは、次第に、ゆったりとした話口調と物腰の柔らかさに象徴される、ウェルビーイングのオーラを発するようになるのです。多くのゲストが、結局はフライトを変更してまで長く滞在するというのも、納得です。
「この場所には、地理的に不思議な何かがあります。」とケイトは続けます。「この土地、そしてビーチも海も、特別なエネルギーを与えてくれます。活力を蘇らせるオーラのようなものです。」
リゾートの創始者、スダナ・ロドリゴ氏は、1968年にこのビーチ一帯を購入したときに、同じように感覚に訴える何かを感じ取っていたのかもしれません。
「当時、父に連れられて、念願の夢だったアーユルヴェーダの癒しのリゾートを建設しようと購入した、ジャングルのように荒れ果てたビーチを見に行った記憶があります。」オーナーの一人であり、現在バンコクの国連事務所で弁護士として働くギータ・カランダワラさんが、思い出を語ってくれました。「30年前、南西海岸にはホテルといえるものは無く、スパのようなコンセプトの存在さえありませんでした。」
「父の横に立って、彼の発想を「気違いと天才は紙一重」と思っていました。」
34年が過ぎた今、リゾートは、その名声だけでなく、口コミで訪れる誠意的なリピーターのゲストを多く抱えるまでに成長しました。スリランカにおいて、自然治癒療法のアーユルヴェーダを実践するリゾートホテルのパイオニアとして、評価を受けています。最近になって、ハーブ・オイルのマッサージだけでアーユルヴェーダを語る似非のスパの業者が、雨後の竹の子のように増えていますが、彼らとは一線を画す、最も本格的な治療を行うアーユルヴェーダ・リゾートとしても有名です。今日のスパ・ブームの中で、マーケティングの新機軸を探ろうとする貪欲なビジネスマンによって、アーユルヴェーダの知識はなくてもそのアイディアが持ち込まれ、アーユルヴェーダ・スパは、もうすぐタイでも急速に流行するだろうと噂されています。本来、アーユルヴェーダによって身体の自然治癒力を引き出すには、数種のオイル・マッサージが必要です。個別の体質診断、経験豊富な治療士による伝統的マッサージ治療、正しい食事、適切なハーブの処方箋が一体となって、ホリスティックな生活スタイルが組み立てられます。少なくとも、献身的な環境になくては、享受できない究極のものなのです。現在、さらに南下したウェリガマの海岸に、もう一つの施設、バーベリン・ビーチ・アーユルヴェーダ・リゾートの建設が進められています。新リゾートは、年末にオープンする予定です。
新しいホテルは、ビーチに面した丘の斜面に建てられ、各部屋から素晴らしい海の眺めを一望できます。より多くの方に治癒力を高めてほしいという信念に従って、新しいリゾートは、自然治癒のリゾートとして初めて、敷地全体を車椅子で移動できるように設計されました。
チャミ・ジョティサリコーンの著書、タイ・スパ・ブック、The Natural Asian Way to Healthは、10月に出版予定です。